健康寿命について


毎日新聞No.172 【平成16年4月27日発行】

~日本一元気な山梨の高齢者~

 古来、長寿を保つことは人類の悲願であるといえる。わが国は、女性の平均寿命が84.93歳、男性が78.07歳と世界一の長寿国となっている(2001年簡易生命表)。人口1億を超える国でなお平均寿命が世界一なのだから、日本人はある意味とても幸福な国民であるといえる。

  ところで「健康寿命」という言葉をご存じだろうか。これは、人間の寿命のうち病気などによって寝たきり状態にならずに、元気で活動的に暮らせる期間を指す。世界保健機関(WHO)によると、わが国は、この健康寿命も平均で73.6歳(男性71.4歳、女性75.8歳)であり、やはり世界一の健康寿命国であるとされている。
  平成11年、東京大学の橋本修二氏を中心とした厚生省研究班が、各県別の健康寿命を算出した結果、山梨県は女性が全国第1位、男性も全国第3位、平均で第1位という結果が出ている。男女平均の上位県を見ると、2位が長野県、以下沖縄県、静岡県、島根県、熊本県の順であった。
  人間の寿命を決定するものは、様々な要因が考えられる。まず考えられるのは親から受け継いだ遺伝情報であろう。またその人がどんな食生活、生活習慣を送ってきたかも重要となる。さらに人生の大半を過ごしてきた仕事で、どのようなストレスにさらされていたかも影響があるだろう。病歴や事故歴などももちろん関係する。人間そのものが非常に複雑な要素で構成されているが故に、決定的な要因は何かとなると答えを出すのは難しい。

  この話をある人にしたところ、「やっぱり水と空気と土だなぁ」という答えが返ってきて、なんとなく納得がいく気がした。恵まれた自然環境の中で、普通に水が飲め、清浄な空気を呼吸し、地元の健康な土壌から採れた野菜を食する。ひと昔前ではあたり前であったことの価値を見直すべきであろう。現在の高齢者の生きた時代の日本は、決して物質的に豊かではなかったが、そうした自然の生活があり、それが今の健康寿命を実現したのではないだろうか。

(山梨総合研究所 主任研究員 広瀬信吾)