中国人の海外旅行


毎日新聞No.177 【平成16年7月6日発行】

~ここ2-3年で飛躍的に増加~

 ビジネス及び旅行を目的として中国から海外に向かう旅行者(中国人)は、1991年には約1百万人に過ぎなかったが、90年前後以降年々増え続け、03年には約14百万人と、大幅に増加している。前年に対する増加幅は、01年約1百万人、02年約3百万人、03年約4百万人と、ここ2-3年で飛躍的に増加しており、沿岸都市部の住民を中心に、海外旅行ブームが始まりつつあるともいえる。今後、2020年までには年間海外旅行者数が1億人に達するとの見通しも出ている。

  わが国と比較してみると、最近時(02年)のわが国からの海外旅行者数は16.5百万人(観光白書)であり、年間の海外旅行者数が1百万人から14百万人の水準に達するのに23年かかっているのに対し(71年1.0百万人→94年13.6百万人)、中国では12年(91年→03年)と、わが国の約2倍のテンポで海外旅行者が増えていることになる。
 中国人の海外旅行の行き先としては、従来は北米が多かったが、最近は旧東欧を含めた欧州諸国、さらには東南アジアなど多様化している。
  中国人海外旅行者が急増している要因としては、経済成長による所得水準の急速な上昇のほか、2年ほど前からパスポート取得手続きが簡素化されたことがあげられる。従来は主要都市の住民がパスポートを取得するには、勤務先の承諾書が必要であったが、この承諾書が不要になった。

  さて、わが国を訪れる外国人旅行者数は02年で5.2百万人で、国籍別では韓国が1.3百万人で第一位で、以下、台湾、米国と続き、中国は第四位の45万人である。中国在住経験の長い知人によれば、中国人の多くは山梨県や静岡県という地名は知らなくても、富士山は知っており、わが国で訪問したい場所としては、富士山や秋葉原などがよくあげられるという。中国人の海外旅行が拡大する中にあって、山梨県全体の観光振興の点からは、富士北麓に来る中国人などの海外旅行者が国中方面に向かうような形ができればと思う。

(山梨総合研究所 調査研究部長 波木井 昇)