原油価格の高騰
毎日新聞No.180 【平成16年8月20日発行】
~楽観できない県内経済への影響~
原油価格が高騰している。
昨年4月のイラク戦争の終結後、しばらく沈静傾向にあった原油価格は、地政学的リスクが解消されないことなどから再び上昇に転じ、最近ではニューヨークの先物相場が40ドル(1バーレル当たり)を突破して、史上最高値を更新し続けるなど、上昇に弾みがついてきている。
原油高の影響は、山梨県内においても、ガソリン価格の上昇や製造業での原材料価格の上昇といった形ですでに顕在化しているが、影響が本格化するのはこれからである。6月以降は、原油高を主因に企業物価の上昇が目立ってきており、県内企業においても、今後、生産コストの上昇による収益の悪化をいかに食い止めるか、これまで以上に厳しい対応を迫られることになる。
最終需要への直接的影響といった点で、今後特に注目されるのはガソリン価格の動向である。9月以降、第二波の上昇が必至とみられるが、その度合いによっては、家計圧迫感の強まりから個人消費への影響が避けられないところとなる。特に、本県のようなマイカー依存度の高いところでは、反応が強く出る可能性がある。もちろん、ガソリン価格の上昇は、運輸関係を筆頭に企業の収益面にも大きな影響を及ぼすことにもなる。
原油価格のこれからの動きは予想し難いが、高騰の根底には中国経済の躍進などによる需給の引き締まりがあるといわれ、今後沈静化に向かったとしても下値はそれ程低くならないとの見方もある。
県内の景気は、全国より遅れてようやく回復軌道に乗り始めたばかりであるが、原油価格の高騰により、先行きはかなり不透明となってきており、場合によっては、この秋を境に早々と息切れ感が出てくる懸念もある。
(山梨総合研究所 特別研究員 川住道夫)