新たな観光資源


毎日新聞No.181 【平成16年9月 3日発行】

~地域の魅力を高める歴史文化遺産~

 ぶどうとワインの町として知られ、年間約2百万人の観光客が訪れている勝沼で新たな観光地づくりの取り組みが始まっている。町内にある近代化遺産を新たな観光資源として地域の魅力を高めようというものである。近代化遺産とは明治期頃からの日本近代化の歴史文化を今に伝える建造物などのことである。

  勝沼は江戸時代に甲州街道の宿場町として栄え、明治期以降は日本ワイン発祥の地としてワイン産業が隆盛し現在に至っており、町内に残る建物などにその歴史文化の足跡を見ることができる。また、中央線が開通した当時の駅跡やトンネル、日川の水害との苦闘を物語る遺構も残っている。
 では今なぜ、こうした取り組みが始められたのか。理由は主に二つあると思われる。一つは、勝沼には多くの観光客が訪れるが、すぐに別の観光地へ移動してしまうことである。観光客は美味しいぶどうやワイン、美しいぶどう畑の景観を味わえるが、歴史文化を味わう機会が少なく町内に留まらない。もう一つは、地域の誇りであり、歴史文化を伝える貴重な遺産が長い時を経て老朽化し、消滅の危機にあるということである。

  「勝沼タイムトンネル100年構想」と称する新しい観光地づくりの取り組みは、明治期から現在までの100年の歴史文化を新たな観光資源として来訪者に楽しんでもらうとともに、地域の未来100年を担うという考えに基づく。近代化遺産の活用は単に観光のためだけでなく住民のためにあるということである。構想では、中央線の旧トンネルをワイン貯蔵庫に活用したり、ワイン発祥の象徴となる建物の修復を計画しているほか、今年11月には、新しい観光地づくりのシンポジウムも予定されている。
山梨県の主な観光資源は自然と果実である。一方で、歴史文化面では武田信玄頼りというところがあったが、最近では舞鶴城公園に稲荷櫓が復元された。従来もつ山梨県の魅力に近世・近代の歴史文化という味付けを加えることで、山梨県の魅力は深みを増すのではないかと思う。

(山梨総合研究所 主任研究員 一條卓)