コミュニティ(共同体)の意味


毎日新聞No.182 【平成16年9月17日発行】

~これからの市町村のあり方について~

 平成の大合併ともいえる市町村の再編が全国で進んでいる。本県でも南部町以降、南アルプス市、富士河口湖町、甲斐市、身延町がすでに誕生し、まもなく笛吹市、北杜市などが新市としてスタートする予定である。

 市町村は、明治時代始め、約7万を数えた。それが明治22年前後に行われた明治の大合併によって、ひとつの村で小学校を運営できる規模を標準として再編され、約1万5千自治体となった。さらに戦後の昭和大合併では、中学校や消防署の維持ができる規模を目指して行われ、これが近年までの約3千2百程度の自治体の原型となっている。
 市町村が、合併を繰り返して大きくなってきた理由は、行政需要に応じた業務を、効率的に行っていく必要性からである。当初は、義務教育や防災だけを主な目的としていたが、自治体の守備範囲は次第に多種多様となり、福祉や都市基盤整備のみならず、廃棄物処理や文化施設、また公共交通や観光施設などを経営する自治体も少なくない。
 こうした行政が行う業務の増大が、基礎自治体の規模拡大を要求してきたわけであるが、規模を拡大した自治体が、これから光を当てるべきなのが、地域コミュニティ(共同体)の役割である。
 補完性の原理という考え方がある。これは、「家族や地域などの小さな単位で可能なことはそれに任せ、そこでは不可能もしくは非効率なものだけを、さらに広域的な自治体や国などのより大きな単位が行う」という原則である。江戸時代に米沢藩の改革を行った上杉鷹山の「自助・共助・公助」の考え方もこれに通じる。

  現在NPOなどによる環境や教育への活動や、自治体内における近隣自治などの、小さな枠組みでの公益活動の萌芽が各地で見られる。行政は、自ら何もかも抱え込んでやろうとせずに、大きくなった枠組みの中で自治体内分権を行い、こうした自助や公助をおこなう主体と、相互の信頼に基づくパートナーシップを築き上げていくことが、これからの大きな課題であると考える。

(山梨総合研究所 主任研究員 広瀬信吾)