緊急避難所としての学校施設


毎日新聞No.184 【平成16年10月29日発行】

~耐震化の促進が急務~

 10月23日、震度6の直下型地震が数回にわたって新潟県中越地方を襲った。その後も強い余震がなお続いた。本県でも東部地域では震度4を記録した。国内で起きた地震としては95年の阪神・淡路大震災以来の最大規模の被害をもたらしている。電気・水道・ガスなどライフラインも寸断された。安全とされていた上越新幹線が脱線し、阪神・淡路大震災以降補強が図られていると思われていた高速道路も寸断された。改めて直下型地震の恐ろしさを思い知らされた。特に山間部では生活道路が崖崩れなどで遮断され集落が孤立した。ヘリコプターでの救援活動を見るにつけて、山間集落が多い本県の事情とも重なる。全国的に防災訓練の形骸化が指摘されているところであり、県内でも改めて防災対策の見直しが急務である。専門家が指摘するように直下型地震の発生が予想できない以上、地震が起きた直後の対策をどのように立てておくかが重要課題といえよう。

  さて、今回の地震でもそうであるが、被災者の緊急避難所として体育館など公共施設が利用されている。特に学校施設は、児童生徒が学校にいる間に災害が発生した際の安全確保の面からはもとより、地域住民の避難場所となるなど防災拠点としても重要な役割を担っている。文部科学省の調査によると、本県の公立小中学校施設の耐震化率は66.2%、全国での順位は4番目となっている(04年4月現在)。全国平均が49.1%であるので、全国平均に比べてその進捗率は高いといえるが、三分の一の施設はまだ改修が済んでいない状況にある。本県の市町村のほとんどは東海地震「地震防災対策強化地域」などのエリア指定を受けていて、何ら指定を受けていないのは三富村、小菅村、丹波山村の3村だけであり、学校施設の耐震化は喫緊の課題である。現在どこの市町村でも極めて厳しい財政状況にあるが、今回の被災状況の深刻さを見ると、施設の耐震化を早急に進めることが行政面での最優先課題の一つであると強く思う。

(山梨総合研究所 研究員 渡井 清)