「モノづくりとコトおこし」


毎日新聞No.186 【平成16年11月26日発行】

~世に出す舞台作りに力を~

 先日、加賀市の大幸甚市長から「九谷茶会」へお招きをいただいた。加賀百万石前田藩の第三代藩主利常は三男利治に分封を願い出て許され、加賀市一帯を統治する大聖寺藩10万石が誕生する。利治は、領内の九谷村で鉱山開発中に陶石を発見し、後藤才次郎を有田に派遣して陶業技術を習得させ、色絵磁器生産を始める。これが九谷焼の始まりである。今から350年ほど前のことである。

  さて、初めての試みという「九谷茶会」は、JR大聖寺駅から徒歩5分ほどのところの蘇簗館をメイン会場に、実性院・蓮光寺・全昌寺・正覚寺などの寺院郡が会場である。裏千家の薄茶、表千家の薄茶、焙茶席・子ども茶席などが開かれ、併せて寺の宝物、例えば、参勤交代の旅程地図の巻物などの寺宝展が開催されている。しかし、この企画はただの茶会ではない。陶芸作家、漆器の工芸家、茶道具製作者などを世に出す舞台であり、加賀友禅など着物文化のステージづくりでもある。
 振り返ってみると、山梨にはワイン、貴金属宝飾、絹織物、和紙、印伝などすばらしいモノづくりの集積はある。しかし、それらを世へ出す舞台づくりや生活を楽しむステージづくりには余り力を入れてこなかったのではないだろうか。
社会が成熟するにつれて、人々は「モノ」だけでなく「コト」への関心を強めている。

  11月26日には甲府商工会議所主催で「2004甲府ジュエリー・ファッションショー」が、12月10日から2月14日には産業界の有志が甲府城を会場に「冬のイルミネーション-光のピュシス」を催す。ワインもある。絵手紙ブームでもある。ワインを楽しみ、和紙で絵手紙づくりを楽しむ会など、コトおこしで地域産業の振興と生活を楽しむ文化をつくりあげていきたいものである。

(山梨総合研究所 専務理事 早川 源)