中国の工業団地


毎日新聞No.187 【平成16年12月10日発行】

~違法開発に注意~

 大企業から中堅・中小企業まで、様々な業種で、日本企業の中国シフトが続いている。製造業の場合、開発区以外の場所で工場を確保する例も見られるが、大半は開発区に入居し、工場を建設している。開発区の方が、インフラの整備が比較的進んでいたり、外資系企業間での情報交換がしやすいようである。

  開発区は工場団地といえ、国務院が設立を認可した国家級のものから、省(わが国の県に相当する)や市、鎮(村に相当する)など様々なレベルの地方政府が認可したものまである。規模は概して、国家級が一番大きく、以下、省、市、鎮などになるにつれて、小規模になる。国家級の開発区は、天津や青島といった大都市の様に、市の中心部から車で1時間程度かかる郊外に設けられている場合が多く、工場群の他に、モダンなデザインのオフィスビルや商業店舗、ホテルなどが建ち並び、まるで、郊外に新しい都市が建設されているようだ。中国全土で開発区の数は、昨年末で国家級が約230、省級が約1,020あり、市や鎮などを含めると数千に及ぶ。

  経済発展を目指す中国では、様々なレベルの地方政府が、ここ数年、開発区の整備と外資企業の誘致に非常に積極的である。地方政府の中には、企業誘致に熱心のあまり、中央政府の土地管理規定に沿った手続きが終了していない段階で、開発区を認可しているところも出ている。中央政府は昨年頃から、こうした不当な開発区の増加を問題視しており、今年上半期には国務院が全国調査を実施している。その結果、土地収用、開発に関する違法行為は、4万件を超えることが判明し、さらに全国の開発区6,700余のうち、7割に相当する4,700余が整理、統合、撤廃されたと伝えられている。こうした中で、日本企業の中には、土地契約の頭金を払い済みであるにもかかわらず、登記や工場建設が出来なくなったところも出ている。中国進出にあたっては、開発区が正規の手続きに沿っているかについても、十分なチェックが必要である。

(山梨総合研究所 調査研究部長 波木井 昇)