行政の顧客「2つの住民」


毎日新聞No.193 【平成17年3月25日発行】

~サービス受け手と納税者~

 ライブドア社と放送局(ニッポン放送・フジテレビジョン)との間で繰り広げられる企業買収合戦は、いま一大関心事となっている。ライブドア社の一連の行動は、企業買収に関する現行法システムを我々に垣間見せてくれた一方で、経営者がアンテナを高く張ることの大切さ、顧客同様に株主が大切であるということを教えてくれた。

  この買収劇で問題となっているステークホルダー(企業等を取り巻く利害関係者)は民間企業であれば、顧客(取引先)や株主、従業員、地域住民等ということになるが、行政ではサービスの受け手や納税者、職員等ということになる。
 ここで、行政におけるステークホルダーとして、住民を「サービスの受け手」と「納税者」に分けたのは、行政サービスの場合、税金の多寡に関係なく、すべて同等のサービスを受けられ、また、保護が必要な場合など、その対価を払わなくてもサービスを受けられることがあり、企業の取引における「大きなサービスを受けるには多くの対価を要する」という原則とは多少発想を変えて考える必要があるためだ。
 いま地方では、国の三位一体改革等により、予算削減や供給サービスの再編が待ったなしの状況にある。厳しい状況下にあって、今後は利便性向上等、より高いサービスの質が求められることとなるだろう。
一方、納税者の視点に立つと事情は異なる。多く納税しても受けるサービスは比例しない。この場合、より安い費用でより良いサービスを求め、申告時期に報道されるタレントの言葉ではないが「税金を有効に使ってもらいたい」というサービス利用者の満足度向上が、そのまま納税者の満足につながる。

  ライブドア社の行動が、顧客だけでなく、株主の大切さを明確にしたということは先に述べた。お金を出す人には「資金を供給する人(株主、納税者)」と「サービスの対価を払う人(顧客、行政サービスの受け手)」がいることを認識した上で、今後、サービス提供のあるべき姿について考えていきたいものである。

(山梨総合研究所 研究員 家登正広)