街の魅力と地価


毎日新聞No.195 【平成17年4月22日発行】

~住んでみたい街甲府への第一歩~

 3月24日、平成17年度の地価公示が発表された。全国的に地価下落は続いているものの、下落幅は低下し、下げ止まりも見え始めている。地方都市でも、駅前などでは上昇に転じた地点もあるという。

  本県では、下落率の縮小こそ見られるものの、相変わらず全国有数の地価下落地域である。特に、甲府市丸の内の商業地で、20%を越える下落率を記録したように、甲府での下落が目立つ。継続的な下落により、住宅地ではバブル末期のおおよそ半値に、商業地では1割程度の地価となった。
 住宅地、商業地の地価は、街の魅力のバロメータである。ある住宅地の地価は、購入希望者がその地にどれだけの魅力を見出し、購入にいくらまで支払う意思があるかによって決まる。街の住みやすさや快適さなどに、値が付けられているのである。
 また、商業地では、その地での商売により期待される収益が地価を決定する。賑わいがあり、商業地として魅力的であれば、より高い額での購入希望者が出てくる。
 県庁所在地でありながら、小学校の統廃合が進み、空き店舗が軒を連ねる甲府は、住んでみたいとか、新規出店しようという魅力に欠けた街なのである。こうした状況を打開するためには、新たに移り住んでくる人やそれを希望する人を増やすことが基本である。住む人が増えれば、商店にも活気が戻る。
 昨今、甲府の中心街に、いくつかのマンション建設計画が進んでいる。すでに販売された物件の売れ行きは、好調だったらしい。こうした動きは、一時的に地価を下げ止まらせるだろう。しかし、マンションが建つだけでは街の魅力は高まらない。一時的に人が戻ったとしても、魅力のない街からは、やがて人は去っていく。

  いま行政に求められるのは、新たなマンションに入居する方々が、甲府のどこに価値を見出し、街に何を求めているのかを知ることである。そして、それを街づくりに反映するのである。いま新たに移り住まわれる方の望みは、その背後に控える潜在的な移住者予備軍の望みでもある。

(山梨総合研究所 主任研究員 藤波 匠)