地域循環型経済をどうつくるか


毎日新聞No.197 【平成17年5月27日発行】

~分野超えたネットワークを~

 地球の長期的収容力から見ると、日本人、英国人、ドイツ人は一人当たり平均3倍、アメリカ人は実に6倍もの資源消費をしているという。地球上のすべての人間が日本人であるとすれば地球が3個必要になる。持続的な生活をするためには、日本人は資源消費量を3分の2減らし、地球1個分の範囲内での生活を求めなければならない。こうしたことは頭で理解できても、実行に移すことはなかなかできない。

  地球1個分の生活をスローガンに掲げ、地域企業や生産者、市民とパートナーシップを組んで、様々な地産地消活動を実践している環境団体が英国のバイオ・リージョナルグループである。国内各地の木炭生産者を組織化し、大型小売店に販売するネットワーク事業。紙の地域内リサイクルや紙パルプの小規模生産事業。ラベンダー畑の復活とラベンダーオイルの販売。化石エネルギーゼロ住宅地の開発、車の共同利用グラブなど様々な活動を展開し、国内外で注目を集めている。このグループは1990年代半ばに生まれた若い組織で、現在25名程度。地理学、生態学、経営学、人類学などの幅広い分野の出身者で、参加するまでのキャリアも多彩である。
  地産地消をすすめ、地域循環型経済をどうつくるか、生活の質的向上をどう実現するかは地域再生の鍵である。地域経済が競争力を持つためには、地域に根ざした産業、雇用を生み出すことである。地域の課題の解決策は新たな関係から生み出されるものであり、新たな関係をつくることが重要になる。

  バイオ・リージョナルがわずか10年にも満たない期間で解決策を見出し、具体化したプロジェクトを見ると、日本の地域でも同様のことが出来るのではないかという期待がわいてくる。さまざまな地産消費事業を具体化するためには生産者と消費者との間に新たなネットワークをつくらなければならない。新たな解決策を見出すためには異なる分野の人たちとの協業が必要になる。業界、団体、企業、所属を超えた新たなネットワークづくりが求められている。

(山梨総合研究所 調査研究部長 中田裕久)