集落営農で生き残れるか


毎日新聞No.198 【平成17年6月10日発行】

~地域の外の力が必要~

 田植えを終えた水面が、初々しい緑を映している。夕暮れには、田を渡る風が頬をなでる。この情景をいつまでも残したいと思うのは私だけではないだろう。しかし、注意深く眺めると、そこここに遊休農地が現れる。

  農業センサスによれば、過去一年間作付けされず、今後も作付けする意思がないと認められる県内の耕作放棄地は、平成十二年度時点で全耕地の十二・二%に上る。しかも、この二十年間で、その比率は十ポイント近く増えている。かねて農業が危ないと言われてきたが、ここ数年でその危機感は現実的なものとなってきた。
  国も県も、このような状況に対応するため集落営農を進めることとしている。今月三日には農地制度の改革などを盛り込んだ「改正農業経営基盤強化促進法」等が成立し、この九月から施行される見通しとなった。集落営農とは、集落を一つの営農単位ととらえ、農家の規模や専業・兼業の違いなどにこだわらずに農作業の共同化や受委託などを進めようとする営農形態である。農村地帯に古くからある、田植えなどの農作業時に互いに力を貸し合う「ゆい(結)」のような相互扶助のシステムを基盤としている。
  この集落営農システムは農業を救うか。私は疑問に思う。集落営農はおそらく、水田地帯でも果樹地帯でも、核となる農家や経営感覚に富んだ企業家なしには成立しない。自分の農地を耕作するのが精一杯といった高齢農家、兼業農家がいくら集まっても、話し合いと合意に基づく集落営農を進めることは容易ではない。また、核となる担い手を持たない農村の集落営農組織は経営的にも成り立ちにくく、その継続性が問われそうである。
 
 このような農村が生き残るには、地域の外の力が必要である。そして、それは株式会社を含む多様な経営体が、地域との良い緊張関係を持ちながら、経済原則に則った経営を行っていく中でしか、見いだすことができないものではないかと思う。そういう意味では、改正法が株式会社に農地の所有を認めなかったのは残念だ。

(山梨総合研究所 主任研究員 山本盛次)