7月から愛知で世界選手権 競技通じ自然と共生考える
毎日新聞No.202 【平成17年8月5日発行】
~山梨ゆかりのオリエンテーリング~
二一世紀最初の万博である「愛・地球博」が開催されている。入場者数は一千三百万人を超した。世界各国の多くの情報が発信されている愛知で、八月七日からもうひとつの世界的イベントであるオリエンテーリングの世界選手権が始まる。
オリエンテーリングは、地図とコンパスを頼りに地図上に示されたチェックポイントを回るスポーツで、北欧を発祥地とする。参加者数が千人を超える大会は年に数えるほどで、一万人を超す大会もあるロードレースやマラソンと比べるとその認知度は高くない。しかし、年齢別にほぼ十歳刻みで六五歳以上までのクラスが設けられるオリエンテーリングは、生涯スポーツとしても取り組むことができ、また体力にかかわりなく地図の読図力を主としたトレイルオリエンテーリングは、バリアフリーなスポーツとしての一面も持つ。
山梨県はこのスポーツとの関係が深い。一九八五年にオリエンテーリングクラブ・トータスにより日本初の五日間大会が八ヶ岳南麓で開催された。これを機に数多くの地図が作成され、その後、同地域は大学クラブのオリエンテーリング合宿のメッカになっている。また、トータスは二〇〇〇年にNPO法人化し、北杜市で普及活動を行っている。
二一世紀の大きな課題は、地球規模で人類と自然との調和を図ることと言われており、「愛・地球博」でも「自然の叡智」がそのテーマとされている。オリエンテーリングは、道をはずれ、里山深く入り、植生の境や小さな尾根や沢を回るコースであり、自然の営みを他のスポーツよりも身近に感じることができるであろう。反面、自然に少なからず負荷をかけるスポーツであり、また、地権者や地元自治体との協力関係なしには成り立たないという側面から、競技者にもいっそうの自然への配慮が求められるようになってきている。
この夏、自然の叡智を感じる第一歩として、オリエンテーリングというスポーツに触れ、自然との共生について考えてみるのはどうだろうか。
(山梨総合研究所 主任研究員 安藤克美)