もう一つの合計特殊出生率


毎日新聞No.204 【平成17年9月2日発行】

~晩産と10代出産の増加 きめ細かな支援必要~

 先ごろ、厚生労働省は04年の「1人の女性が一生涯に生む子どもの数の推計(合計特殊出生率)」を1.29と発表した。この数字は一昨年と同様で、低下に歯止めがかかったかの感がある。だが、少数第4位までとると、03年より0.0018減少しており、減少傾向はいまだ続いているといえる。今回の総選挙でも、少子化対策は最重要課題で、各党はマニフェストを競っている。

 一般的に合計特殊出生率とは、15歳から49歳までの女性の出生率の合計である。15歳から49歳までの年齢を5歳刻みに計算した年齢層別で見ると、25歳から34歳までの年齢層が出産世代であることがわかる。しかし、この年齢層の合計特殊出生率も年々減少している。特に25歳から29歳の減少が著しい。
 一方、全体が減少する中で、むしろ増加傾向にある年齢層がある。15歳から19歳と35歳から39歳である。25歳から29歳の著しい減少と35歳から39歳の増加は、女性の晩産化が進行中であることを示している。
 また、15歳から19歳の10代の合計特殊出生率も増加傾向にある。この10年間で約1.5倍に増えている。別の統計によると、人工妊娠中絶の女性千人あたりの件数が、10代ではここ10年で約2倍に増えている。
 年齢層別に合計特殊出生率の推移を見ると、年代による出産に対する考え方の変化をうかがうことができる。少子化対策を考える時、各年代の考え方の変化にも着目することが必要である。
 成人女性の晩産化の傾向は、女性の社会進出などと相まって今後も続くものと思われる。この動きに対応した、子供を生み育てやすい環境の整備を図ることが重要である。

  一方、10代の女性の出生数は、全体のわずか2%未満に過ぎず、合計特殊出生率の全体に与える影響は少ない。しかし、10代の女性の動向は、将来の出産率上昇の鍵を握っている。行政を始めとしたきめ細かい支援が大切である。

(山梨総合研究所 研究員 渡井 清)