団塊の世代の定年


毎日新聞No.205 【平成17年9月16日発行】

~2007年問題による悲観視は禁物 地域活性化への貢献も期待 ~

 団塊の世代(1947~49年生まれ)が2007年から定年年齢(60歳)に到達する。
  この団塊の世代の定年をめぐっては、短期間に大勢の退職者が発生することによる企業活動等への影響が憂慮され、「2007年問題」などと呼ばれている。具体的には、一時的な労働力不足の顕在化、技術・ノウハウの継承の途絶、消費へのマイナス効果、等々である。

  主な項目について影響を探ってみると、まず、労働力不足と技術・ノウハウの継承の問題については、これまで伝えられている企業の取り組み状況をみる限り、あまり大きなダメージは受けないと思われる。情報量が少ないため、全体像はよくわからないが、少なくとも、リスク管理が進んできている昨今では、このような経営の根幹に関わる問題が安易に扱われることはない。また、最近では、大企業を中心に継続雇用制度の導入が進んできており、60歳到達者が一斉に職場を去るわけではない。来年4月からは、高年齢者雇用安定法に基づく高年齢者雇用確保措置が企業に義務付けられることになるため、今後は60歳到達後も働き手として留まる人がさらに増えてくる。こうした動きからも、この2つの問題の影響はかなり回避されるものとみられる。
  消費については、短期的には、収入の減少によってマイナスに作用するが、その後は、年金の満額受給開始などにより消費姿勢が上向き、教養娯楽分野を中心に、むしろ、消費のリード役になる可能性がある。
 このほか、労働市場においては、正社員の採用の増加などによって、若者の就職環境が好転する。さらに、地方からは、UターンやIターンの増加を見込み、地域の活性化につながるとして、熱い視線が注がれている。

  このように、団塊の世代の定年については、「2007年問題」という言葉に象徴されるような暗いイメージばかりでなく、明るい材料もいろいろあることを強調しておきたい。

(山梨総合研究所 主任研究員 川住道夫)