県立博物館「かいじあむ」オープン


毎日新聞No.206 【平成17年9月30日発行】

~豊かな生活を演出する拠点~

開館企画展は「祭り」

 10月15日(土)県立博物館「かいじあむ」がオープンする。「山梨の自然と人」を基本テーマにしたミュージアムの開館企画展は「祭り」。「当国一大盛事」といわれ、大変な賑わいであった小正月の「道祖神祭り」である。

  江戸中期、甲府の町人衆は大変羽振りがよかったのであろう。柳町、緑町など各町が競って江戸で人気の歌川広重など浮世絵師を招いて大きな幕絵を描かせた。それは縦1.5メートル、横10.5メートルというものである。“小江戸甲府”といわれた中心の商家の前には「江戸名所」や「東海道五十三次」が描かれた幕絵が吊り下げられ、大勢の見物客で賑わったと記されている。
 ところで、飛騨高山や岸和田などには見事な山車がある。長浜にしても足助にしても栄えた町には必ずといってよいほど山車がある。なぜ、羽振りがよかった甲府の町人衆は山車を作らなかったのだろうか、これは大きな謎である。ある説によると、それは「甲府上水」と深い関係がある。山車を引き回せば甲府城や城下町に引き込んだ水路「甲府上水」が壊れてしまう。そこで山車に変わるものとして幕絵が飾られたというのである。大きな山車ともなれば2トン、3トンという重量になるから頷ける話である。

  さて、博物館といえば、とかく古臭いものを展示しているところというイメージである。しかし、博物館は世の中を映す鏡、社会が成熟する中で高学歴化が進み、余暇が増え知的欲求が高まるにつれて豊かな生活を演出する中核的な施設である。手で触れ、考え、体験する場所、子供たちの学びの場、県民との対話を広げる場所である。集められた「山梨の光」は知的観光資源でもある。県立博物館はこれから市町村の博物館や資料館などとの連携を強めながら成長していくことになるだろう。開館が楽しみである。

(山梨総合研究所 専務理事 早川 源)