人口減少社会での都市再生へ
毎日新聞No.207 【平成17年10月14日発行】
~公共施設の市民利用推進~
日本の人口は2006年をピークに減少する。また、日本は欧米諸国の中で最も高齢化率が高く、高齢化のスピードも急激である。高齢単独世帯が増えることから、世帯総数は今後とも増加し、2015年をピークに緩やかに減少する。これは、年金、介護・福祉、医療などの社会保障制度のみならず、経済社会、地域社会のすべてに大きなインパクトを及ぼす。ダウンサイジングの時代を迎えると、需要の増大を前提にした道路、ハコモノなどの社会資本は過剰となり、維持管理できない事態も出現する。
西欧の各都市では、中心街の道路をコミュニティー道路や歩行者専用路に転換したり、公営住宅を店舗付き高齢者用住宅に改造したり、学校施設をコミュニティーと共用して、都市の活性化を図るケースが多い。
例えば、イギリスでは学校とコミュニティーとの間で施設の共用が進められている。小学校に付属した高齢者センター、成人学校と中学校の施設の共用など、学校やコミュニティーサービスとの境界を取り除けば、より質の高い施設や設備を生徒や地域住民に提供できる。また、地域の様々なニーズに対して、より親しみやすいサービスを提供できる。物的にも心理的にも、学校とコミュニティーとの垣根を解体する試みといえる。ドイツの町では利便な位置にある庁舎ホールや図書館を美術展や文化催事に利用している。聖域を設けず、公共施設や街路の市民利用を推進することで、都市生活の質的向上を図ることができる。 また、周辺の商業施設の活性化にもつながる。もちろん、こうした試みには、市民や関係者、担当部局の共同作業を通じ、諸制度を調整し、新たな運営方法を創造することが必要になる。
市内の身近な公共施設をコミュニティーのために有効活用しようというスローガンが「コミュニティーの一つ」である。県内の自治体は、指定管理者制度の導入や市町村合併による様々な公共施設の再利用の問題を抱えている。「コミュニティーの一つ」として、公共施設の市民利用を推進し、地域をどう活性化するか、都市再生の第一歩として検討すべき課題である。
(山梨総合研究所 調査研究部長 中田裕久)