ニート世代の就職
毎日新聞No.209 【平成17年11月11日発行】
~少年よ、動機を抱け~
最近、「ニート(NEET)」(無職であり、教育機関へ所属せず、就労活動をしていない15~34歳の未婚の者)という単語に定着感が出てきた。この単語はもともと英国生まれなのだが、認知度では日本の方が断然ポピュラーであるらしい。英国の記者が日本に来て初めてニートという単語を知ったという話もある。わが国のニート人口は、厚生労働省の「平成17年版労働経済の分析」によると、平成16年では64万人にも達し、まだなお増加の傾向にあるという。
ニート世代が育った時代は高度経済成長期が終えた後で、父親は家庭を顧みず働き、母親は子どもを学校に任せてパートタイマーとなった。残された彼ら(ニート世代)は孤立し、裕福さと引き換えに社会とのかかわりを失った。
また、彼らの唯一の社交場とも言える学校現場においては、競争という概念は排除され、均一化されたカリキュラムによって競争意識を持つこともなくなった。
これによりニート世代は社会と関わることが不得手となり、己の力を実社会で試してみたいと望むことなく、就職に向けての努力や、何のために働くのかという動機も持てなくなってしまった。考えるに、日本におけるニート問題は、ある意味必然的な帰結なのかも知れない。
こうした彼らを職に誘うための糸口は、内発的な動機付けをいかにして起こさせるかにある。それは自分自身の存在意義を職の中に見出すことだ。つまり、職業による自己顕示欲の啓発、簡単にいえば、得意分野と職とを連動させることで動機付けを促すのである。そのためには、個々の問題解決を行う場所作りが必要だ。既にジョブカフェがその対応にあたっているが、より身近な窓口が必要である。厚生労働省では18年度からハローワークにおいて個々のカウンセリングサービスを提供する体制を整備する方針であるが、この機能に大いに期待したい。しかし、これはあくまでもきっかけの部分に過ぎない。その後はいかにして自己実現を図るのか、自身の力量にかかっている。
少年よ、動機を抱け。
(山梨総合研究所 研究員 中野一成)