国内ロングステイに注目


毎日新聞No.210 【平成17年11月25日発行】

~開発避け既存施設の活用を~

 最近、国内のある地域に一ヶ月以上滞在する「国内ロングステイ」や「二地域居住」といったライフスタイルが注目されつつある。

  「ロングステイ」は外国のロングバケーションを連想させるが、国内においても従来のような、有名な観光地だけを巡るというものではなく、一ヶ月以上にわたり滞在し、住民と同じ視点でその地域の「生活レベルの魅力」を味わおうという人たちが増えている。また、「二地域居住」は、都市の住民が一年のうちの一ヶ月以上の期間、あるいは定期・反復的に農山漁村等の同一地域に滞在するスタイルをいう。「二地域居住」については、国交省、農水省を中心に都市農村交流の観点から検討されているため、都市住民と農山漁村という関係で定義されているが、実際のニーズから考えれば、夏は涼しい所に、冬は暖かい所に、あるいは夏は海に、冬はスキーにといった、より広範囲のライフスタイルも想定されよう。
 このようなライフスタイルは、二〇〇七年問題を控え、定住人口の伸び悩みに苦慮する多くの地域で、地域の活性化を支える第二、第三の人口になりうるものとしてがぜん、注目されているのである。
 ただし、こういったライフスタイルの促進を図るには、滞在の拠点となる施設を整備していくことが必要となる。これまでは別荘やリゾートマンションがその一翼を担っていたと思われるが、今後の人口減少社会を勘案すると、自然環境を損ねたり、新たなインフラ整備負担につながるような開発は望ましいとはいえず、出来る限り既に整備されている施設の活用を図るべきである。例えば、旅館・ホテルや賃貸マンションのコンドミニアムあるいはマンスリーマンションへの業態転換があるであろうし、民家の空き家対策としても同様の考え方が出来よう。

  既に国内のNPO(非営利組織)法人の中には、ロングステイ希望者と住宅の提供者をマッチングさせる事業を始めているところもある。今後、成長性のある事業分野の一つとして、顕在化しつつある国内ロングステイといったライフスタイルを受け入れるサービス体制の充実が期待される。

(山梨総合研究所 主任研究員 保坂幸彦)