協働による自治体運営


毎日新聞No.212 【平成18年1月20日発行】

 道志村でいきいきふれあいトークが開催されている。道志村は平成の合併の嵐の中、単独存続を決めた後、無投票で大田村長が誕生した。村長は、村内7つの地域の自治会に加えて、子育ての会、ヨガの会、あるいは自治会に属さない別荘族を中心とした住民と対話している。おおむね毎晩7時から、公民館に座布団を敷いて文字通りの車座の対話である。
  住民から出る意見は、村内全域への情報インフラの整備といった10年計画で実現を目指すものから、身近な苦情まで様々である。住民との協働ということは各種の計画で使われている。しかしながら、計画を策定する行政の側にも単なる目標に過ぎないことが多いのではないだろうか。小規模町村では今後とも厳しい財政事情が予想され、行政でできることも今までよりもいっそう限られてくる。

  住民の側が望んでも実施されず、行政不信が生まれることもあり得る。NPOの資金基盤の確保やマネジメントを行っているNPO法人パブリックリソースセンターの岸本さんは、NPOの大切さについて、第1に社会変革の担い手であるとしている。
  小さな問題が社会の中に生まれたときに、それに対応するための事業を提案していく力を持っているのは、実は地域の小さな集団であり、介護保険もNPOの取り組みから法制化された例をあげている。そういう団体が地域にたくさんあることが地域の活性化、安定化、誰もが生きやすい地域社会づくりに大事である、としている。

  現在、道志村では、都留市へ1便、富士吉田市へ2便しかバスの運行がない。バスの増便については、いきいきふれあいトークでも要望が出ているが、村からバス会社への補助金が必要となり、また利用者が減少している状況から便数を減らしてきた経緯もある。
  それを補完するものとして、ボランティアによる診療所への送迎が始まっている。事故があった場合の対応などクリアしなければならない問題はあるが、協働により自治体運営のひとつの選択肢が生まれつつある。

(山梨総合研究所 主任研究員 安藤克美)