条例策定への住民参加
毎日新聞No.213 【平成18年1月27日発行】
近頃、総合計画をはじめとする各種計画だけでなく、条例によるまちづくり、自治基本条例の制定を行う自治体が全国的に増えている。
小泉政権による国・地方の三位一体改革をはじめ、地方を取り巻く社会環境は大きく変化している。県・市町村には、以前にも増して自律性の高い行政運営や、そのまちに見合った独自のまちづくりが求められるようになった。このような動きの中、山梨県内でも、条例制定の動きが見られるようになっている。
自治基本条例は、その自治体における数多くの条例の頂点に位置づけられるだけでなく、ややもすると縦割りになりがちな自治体組織を束ねる、「憲法」であるともいえよう。
この自治基本条例の制定の動きは、前述のとおり、いま全国的に広がっていて、流行の様相を見せているが、単に流行だからといって住民不在の早急な条例策定は禁物であろう。それというのも、自治基本条例は、その地域の将来にわたる自治のあり方を規定するものだからである。
まちづくりには2つの面があって、道路や景観整備などハード面だけでなく、情報の共有化や住民参加などの仕組みづくりといった目に見えない面が含まれる。住民がその地域に住むことを誇りに思える暮らしづくり、それが真の「まちづくり」に他ならない。
まちづくりに当たっては、住民やボランティア、NPO(非営利組織)、事業者、行政が互いに協力することで、地域社会の課題を解決し、地域を豊かなものにする「住民自治」の原則により進めることが不可欠である。自治のありようを示す条例が単なる「流行」によって作られる場合、行政側の目的(財政が厳しい)ばかりが先行し、知らぬ間に住民の役割・責務ばかりが規定されないとも限らない。
自治基本条例は前述のとおり、情報共有や住民参加など、まちづくりの基本となる決め事である。このため、リンカーンではないが、住民の、住民による、住民のための策定という視点が重要である。また同時に住民には今、自治への関わり方が問われている。関心がない、では済まされない。
(山梨総合研究所 主任研究員 家登正広)