研究者が住みたいまち
毎日新聞No.215 【平成18年2月24日発行】
昨年11月9日JICA横浜のMさんと神奈川県異業種グループ連絡会議のSさん等がアルメニア共和国政府の産業視察団をつれて山梨にやってきた。
アルメニアは、1991年ソビエト連邦の崩壊後独立した人口321万人、国土面積は日本の13分の1という小国である。ヨーロッパの最南東部にあり西アジアと接している。西にトルコ、北にグルジア、東にアゼルバイジャン、南にイランという国々に囲まれている。
ブドウ栽培が盛んで、ワイン特にコニャックが有名だという。ダイヤモンドを中心に宝石加工も盛んで気候風土、産業構造ともに山梨によく似ているという。
それはさておき、そのときSさんからこんな話が飛び出した。「横浜は市を上げて国の研究機関である理化学研究所を誘致した。ところが横浜には住みたくないと研究員たちが言っている」というのである。
この研究所は研究員850人、年間研究費220億円、ゲノム、免疫、遺伝子、植物科学など最先端の研究所である。ではどこに住みたいのかと聞くと、なんと三重県、なぜ三重県なのか、なぜ山梨県ではないのかと聞いたが明確な答えは返ってこなかった。
それでは、研究者たちはどんな生活環境を求めているのであろうか。社会学者ポールレイは環境や健康を重視する階層をLOHAS(Lifestyles Of Health And Sustinability)と呼び、その階層が人口の30%を占めるようになってきたと分析している。また、社会学者リチャード・フロリダ(カーネギー大教授)や心理学者シェリー・アンダーソンはカルチャークリエイティブ層(創造的階層)といわれる人々が人口の26%になってきたと分析している。工業社会から知価社会への転換期である。これまで以上に人材力が地域発展のキーとなる。
山梨は、スローライフ発祥の地イタリアのトスカーナ地方のような豊かな自然環境を残している健康長寿県である。LOHASや創造的階層のニーズをしっかりと把握し、彼等が住みたくなるような地域づくりを進めるチャンスではないか。
(山梨総合研究所 専務理事 早川 源)