W杯を目前にして
毎日新聞No.218 【平成18年4月14日発行】
サッカーJ1昇格チームの中でもヴァンフォーレ甲府(VF甲府)は現在13位と健闘している。また、サッカーW杯ドイツ大会まで2カ月を切り、サポーターにとっては待ち遠しい限りである。Jリーグはドイツのスポーツクラブを目標に発足したという。オリンピックを始め、W杯などの国際大会で常に上位を占めるドイツのスポーツ界の原点は地域のスポーツクラブである。
ドイツでは19世紀初頭に体操や陸上競技などを中心とした青少年教育活動が生まれ、19世紀末にはイギリスのスポーツの影響を受け、テニス、ゴルフ、サッカーなどのスポーツクラブが誕生する。ドイツでは7人集まるとスポーツクラブの条件が整い、州政府の認可や登録を経て、公的支援が受けられる。
スポーツクラブもいろいろである。クラブ独自の施設を持つもの、市のスポーツ施設を利用するもの。多種目のスポーツを含む総合タイプ、射撃、 乗馬、テニスなど単種目タイプなど。会費もテニスなどの高いものからサッカーのように安いものまで。クラブ運営は会員の会費、協力金のほか、施設維持管理のための労働奉仕によって支えられている。
人口7万人程度の地方都市(アーレン市)を例にあげると、スポーツクラブ数は100前後、人口の4割近くが加入し、会員の3割が18歳以下の青少年である。また、市及びクラブ所有のスポーツ施設は50数カ所に上る。街を歩けば芝生のサッカー場、陸上競技場、体育館などのスポーツ環境に出会うのである。
Jリーグ発足以来、各地で地域スポーツクラブの設立や環境整備が盛んになっている。
山梨県においても韮崎市を始め、市の主要施策としてスポーツ振興に取り組んでいる自治体が増えているが、一般成人の日常生活の中にスポーツシーンが展開しているとはいえない。
VF甲府の活躍で、老若男女を問わず、県民全ての人がスポーツを身近に感じ始めている。これを契機にして、地域スポーツクラブで、実際にスポーツ活動を通した楽しみ、交流の楽しみを実体験してはいかがであろうか。
(山梨総合研究所 研究部長 中田裕久)