選択と集中
毎日新聞No.219 【平成18年4月28日発行】
現在県内のいくつかの自治体において、総合計画の策定時期を迎えている。総合計画はその自治体におけるさまざまな計画の規範となるものであり、おおよそ10年を計画期間として策定される。最近では、政策から実施計画のプロセスの中に、「地域経営」という考え方が導入されるようになった。これは自治体を企業経営戦略の視点から見ようとするものである。
その一つが「選択と集中」という考え方で、他との差別化を図るため、行政であれば地域、企業であれば自社の持つ「強み」に絞り込んでメリハリのついた事業展開を行うことにより、大きな効果を生み出していくという戦略である。
しかしながら、この絞り込みが大変難しい。なぜなら、「強み」以外の分野においては「捨てる覚悟(もちろん全くの0にするわけではないが)」をしなければならないからである。一方、絞り込んだ事業については、その他の分野をカバーするほどの効果を生み出さなければならない。また、選んだ分野が継続的な効果を得られるものであるかどうかの判断も難しい。
これらの理由から、「選択と集中」の失敗は大きな損失を生むというリスクを背負うことになる。企業においてはこのリスクマネージメントのため、将来を見据えた体制作りや入念なリサーチが大前提となる。
行政においては、将来を見据えた体制作りとして、確固たる住民との「パートナーシップ」を築き上げることがまず必要であろう。また、今年度より本格導入される「市場化テスト」を脅威とせず、民間企業との補完関係という視点で体制の強化につなげることも肝要だ。
その上で投資すべき「強み」とは何なのかを協働で検証するリサーチを徹底的に行っていくべきである。
「協働」の名を借りた行政の膳立てによる「参加・参画」だけでの取り組みではリスクマネージメントは到底でき得ないであろう。これを契機に、民と官で強力なパートナーシップを築き上げてほしい。
(山梨総合研究所 研究員 中野一成)