『Yafo Mag』VOL.6「交通事故死者20%減にもかかわらず」


 平成17年の県内の交通事故死者数は、平成14年~平成16年の3ヵ年平均に比べ20%減少した。しかし、こうした減少の一方で、75歳以上の高齢者が歩行中に交通事故に遭い、死亡した数は、同年比較で±ゼロである。すなわち、交通事故死亡者減少の影で、いわゆる交通弱者のもらい事故による死者は減っていないのである。
 実は、県内の事故発生件数は同年比較4%減に過ぎない。しかし、車の安全性能の向上やシートベルトの着用率の向上により、車の中にいる人は守られるため、死者全体では減少している。その一方で、守る鎧のない高齢歩行者の犠牲者は減らないのである。
 近年、乗用車の動力性能は飛躍的に高まっている。しかし、私たちドライバーの運転技術やマナーが向上したとはとても思えない。人に優しい車社会を作るためには、なにより交通弱者への配慮が必要であり、それなくしては本当の豊かさが車によりもたらなれることはないだろう。車の性能向上を追い求めるより先に、ドライバーの他者へのいたわりの気持ちを醸成するほうが先決ではないだろうか。

(主任研究員 藤波 匠)