都心回帰の三つの流れ


毎日新聞No.222 【平成18年6月16日発行】

 都心回帰という言葉が使われるようになってしばらくたつ。一般的には、大都市圏の郊外化から反転して、中心地区に移住が進む現象で、東京圏(東京都・埼玉・千葉・神奈川県)では、96年から転入超過数が増加に転じている。ここでは都心回帰について山梨県の状況に即して次の三つの意味に捉えてみる。

  第一に東京圏への回帰の山梨県への影響についてである。東京都中央区は00年から05年までで約35%人口が増加しており、また、つくばエクスプレスなどの新たな公共交通動線には高層マンションや商業施設の計画が集中している。県東部ではこれまで東京圏からの移住を見込んだ街づくりをしており、今後、さらなる移住者の獲得や流出防止に乗り出すか選択に迫られる。
 第二に地方都市での中心部への回帰である。地方都市の目指すべき将来像として、公共施設、商業施設、住宅を人が歩いて移動できる範囲に集中させるコンパクトシティという街づくりが提唱されてきている。一方、これまでの郊外化のコストの試算も行われており、青森市では、70年から99年までの30年間に市中心部から郊外へ約1万3000人が流出し、道路や小学校、上下水道の整備に約350億円が投資されたとし、富山市ではごみ収集費なども加味し、今後20年間に約177億円増加するとしている。これらの動きは都市基盤の整っていない地域への住宅建設等に警鐘を鳴らすものであろう。
 第三に過疎地での中心部への回帰である。豪雪地帯では点在する集落が除雪費の負担増につながることは知られているが、今後、必要となる高齢者福祉などの面でもすべての集落に公共サービスを提供するコストについて考慮すべきである。

  都心回帰は、雇用機会、消費機会、利便性などの都市の魅力の向上と地価の下落の二つの要因によるものと説明されることが多い。地方都市において比較的都市集積の高い中心部への回帰がなぜ起きないのか、過疎地における適切なサービスはどのような方法か考えてみる必要がある。

(山梨総合研究所 主任研究員 安藤克美)