教育の瓦解と親の課題


毎日新聞No.223 【平成18年7月7日発行】

 今日は七夕であるが、この時期には保護者参観やPTA懇談会を設定する学校・幼稚園・保育所が多いのではないか。この保護者参観や懇談会をはじめとする教育や保育の現場でここ数年、時・場所・状況、いわゆるTPOをわきまえない親が増えていることを実感する。私も先日、ある懇談会に参加したが、親たちの私語がうるさくて子供たちは先生の言うことが聞こえない、という状況であった。そのような状況の中で「何かおかしい」、「子供が集中できていない」とは思ったものの、保護者同士の他愛ない会話が子供たちの集中を妨げているのではないかと気付いたのが帰宅してからであった。私自身の鈍感さを反省しつつも、子を持つ世代には改めて自分自身を振り返っていただきたいと思う。

  親の問題は、TPOに対する無関心だけではない。ある学校では次のようなことがあった。ある子供が学校内で同級生の物を奪った。学校では、取った物を元の所有者に返却させた後に教育上の配慮から、このことを保護者に報告したところ、我が子を警察に突き出すよう教師に伝えたという。ここで問題になるのは、親の教育力である。しつけができないのか、それともしつけに対する熱心さが足りないのであろうか。
 学校による差は確かにあろうが、保護者自身の問題は、大なり小なり教育関係者の間で10年以上前から言われてきたことであるようだ。教育現場の状況が悪化していることに関しては、教師の資質に問題があるともいわれるが、これはニワトリが先か卵が先かという論争に近い。保護者をはじめとする国民の多くが子供のしつけを学校任せにし、教師の地位を軽んじてきたという面もあるからだ。

  「子は親の背中を見て育つ」という。子供に落ち着きがない、授業中席に座っていられないといわれるが、大人のTPOへの無関心や、しつけに対する無関心が子供たちの態度に表れてはいないか。今学校現場で起こっている学級崩壊と親の世代における無関心との間に因果関係がないことを願いたい。

(山梨総合研究所 主任研究員 家登正広)