大学発ワインのラベル


毎日新聞No.230 【平成18年10月27日発行】

 最近とある場面で山梨大学発ワインのネーミングの話が出た。皆新聞などで読んでいるのだが、名称を覚えているものは皆無であった。それでは飲んで覚えよう、ということで、早速お店で買って夕食で飲んだ。甲州白辛口を選んだが、すっきりと後味もよく、父の取ってきたキノコのオリーブオイルソテーとも好相性、なかなかの味であった。と、ここまでは上々であったが、この先はやや眉をしかめた。他県の友人に情報を、と思いラベルの裏側を見ると「山梨大学と共同開発しましたよ」というだけの何のストーリーもない文章が待っていた。

  国立大学法人法の施行により国立大学は、04年4月に国立大学法人となった。兼業規制等がなくなり以前より産学連携が容易になったことや収益確保の必要性から産学連携の製品開発はさまざまなところで行われている。研究成果を生かし、地域や消費者が豊かになることは大いに賛成である。大学との共同開発のワインもまたすばらしい試みであると思う。しかしながら、ラベル表示は大変残念である。もっと工夫があれば良いと思う。大学の貴重な研究成果を商品の差別化や付加価値向上に結びつけるマーケティングやブランディングにもう少しこだわるべきである。
 山梨大学は果実酒を専門に研究するわが国唯一の研究機関であるワイン科学研究センターを有する。その背景には山梨が平安時代からブドウの産地であることや、国内ワイン産業の発展に貢献した山梨の歴史がある。また山梨県のワイン出荷額は35年連続日本一で、高い評価もある。なぜ山梨大学や県産ワインのストーリー、製品開発のストーリーを書かないのだろう。ラベルにストーリー、購入サイト・意見交換サイトの表記を行い、ワインをめぐる消費者の輪を広げていったらどうだろうか。

  と、やや力が入ってしまったが、ワインを買ってきた私に対する妻と母の反応も上々であった。山梨の特産はワイン・宝飾・果実・織物と女性好みである。地場特産品を生かして家庭円満に努めることとしよう。

(山梨総合研究所 主任研究員 小笠原茂城)