地価変動から見る山梨
毎日新聞No.232 【平成18年12月8日発行】
去る9月、06年7月1日現在の基準地価調査が発表された。県全体では下落率は前年よりも2.9ポイント縮小したが、14年連続の下落となった。こうした地点と年次のデータをグループ化して、その特徴を見る方法に、クラスター分析がある。県内でバブル期の地価上昇が始まる前の85年から06年までの22年間に調査地点を替えていない43ケ所を対象に、対前年の変動率について分析を行った結果、大きく5つに分類された。
第1群は早川町など、この期間中大きな変動がなかった地域、第2群は甲州市・韮崎市など、20%未満の上昇が最高で、下落幅も大きくない地域である。第3群は昭和町と甲府市南部を含み、バブル期に県内でも最高の60%近い上昇があり、その後の下落幅もやや大きい地域である。第4群は甲府市中心部と大月市、上野原市を含み、期間中の最高上昇率は約35%であるが、その後の下落率は第3群よりも大きい地域である。第5群は山中湖村や鳴沢村を含み、バブル期に50%近い上昇があったが、その後10%以上の下落率が続くなど地価変動が最も激しくなっている。
「14年連続下落」といった新聞見出しは、地価が下がるのは活気がない象徴と、叱咤激励されている感じを受ける。これは交通アクセスや地域のブランド力が地価に反映するという考え方が浸透し、厳しい地方財政や地域間競争の時代の中で、地域の魅力向上が地価の上昇につながり、さらに税収増につながる、という考えが受け入れられやすくなっているのが一因と考える。北海道の倶知安町山田地区は、オーストラリアからの移住需要により33%の上昇率となったが、同町内でも既存集落は10%以上の下落となっている。山梨県でも2地域居住の候補として、需要が高まりつつあるリゾート地から地価がプラスに転じるのではと期待されているが、過去20数年の間に地価がたどった軌跡を想起し、開発予定地だけでなく、周辺の生活環境も含めた地域全体を向上させていくことが必要ではないだろうか。
(山梨総合研究所 主任研究員 安藤克美)