F1観戦は山梨泊で
毎日新聞No.235 【平成19年2月9日発行】
今年は、本県の観光を全世界にPRするにはまたとないチャンスである。四輪モータースポーツの最高峰、F1日本グランプリが再び富士のふもとにやってくる。過去20年間、日本グランプリは三重県鈴鹿サーキットで開催されてきたが、今年から30年ぶりに静岡県小山町にある富士スピードウェイに帰ってきた。
F1レースは世界中にテレビ放映され、1レース平均1億人以上が観戦するという、オリンピック、サッカー・ワールドカップと並ぶ世界の一大スポーツイベントである。
主催者側では、9月28日から30日までの3日間で、国内外から延べ28万人の来場者数を見込んでいる。一般入場者の富士スピードウェイへの最終アクセスは、すべてバスに限定される。県内経由の場合、中央自動車道と富士急行線利用の観戦客は、富士北麓地域におよそ8,000台分確保される駐車場や駅で、主催者側が用意するシャトルバスに乗り換えることになる。
開催まであと200日余り。開催地は静岡県であるが、本県にも隣接していることから、かなりの経済効果を引き出すことが可能だ。鈴鹿サーキットでの開催時には、名古屋市内のホテル、旅館までも予約客でいっぱいになったという。特に富士五湖地方は国際的観光地としての知名度が高く、富士山を中心とした名所、温泉はもとより宿泊施設の数など、小山町周辺に比べ優位性が高いと思われる。
県観光客動態調査によると、05年9月の富士北麓地方の宿泊客数は約28万人で、1日平均1万人程度となっている。もし観戦客の1割がこの地域に宿泊すれば、通常の2.5倍の集客となる。また、宿泊施設としては石和温泉郷をはじめとする県内全域がその対象となることも考えられ、地域観光協会を中心に「F1観戦は山梨泊で」といった積極的なPRをすべきである。
さらに、県内に宿泊することが観戦客のメリットにつながる取り組みも必要だ。例えば、決勝前夜の花火大会やウエルカムパーティーの開催、観戦チケット所持者には地域周辺における施設利用割引などの特典も検討すべきであろう。F1が、富士山周辺のメーンイベントとして定着することを期待したい。
(山梨総合研究所 研究員 河野恵市)