地域の光をブランドに
毎日新聞No.236 【平成19年2月23日発行】
全国各地でブランド・ブームである。「デザイナーズ・ブランド」、「商品ブランド」、「地域ブランド」、「ジャパンブランド」―など。
デンマークの高級陶磁器メーカー「ロイヤルコペンハーゲン」では、低価格・大量生産を捨て、フローラダニカ植物図鑑に掲載されている植物だけを手書きで絵付けし、すべての商品に刻印を打ち、「清水焼」などの量産品との差別化を図っている。毛皮メーカーのサガでは「サガ・デザインスクール」を開設し、交通費をサガが負担して世界中からデザイナーの卵を募集、研修期間中の作品はすべてサガに帰属させるという方式で、デザイナー育成を通じてブランドの確立を図っている。
地域ブランドを確立した事例としては“勝沼”がある。ワインとブドウのまち勝沼の歴史を見ると、国内唯一のワイン専門教育機関である山梨大学のワイン科学研究センターや県のワインセンター、果樹試験場などと連携し、何世代にもわたる品種改良や新品種の導入、醗酵・醸造の研究開発など技術や資本の蓄積、原産地認証による品質保証・PRなどヒト・モノ・カネ・情報などにたゆまぬ努力が見られる。先ごろもドイツ研修の状況が地元紙の一面で報道されたが、ブランドを確立するためには「魅力の創造」はもちろん、「情報の創造・発信」によって「満足という顧客評価」を引き出していかなければならない。
山梨の貴金属宝飾産業は、全国市場の30%を占有する個性的な地場産業だが、まだまだ消費者に浸透しているとはいえない。社会は成熟化し、モノはあふれ、人口減少社会へ向かい需要構造も大きな転換期にある。海外の一流ブランドの進出も相次いでいる。産地として蓄積してきた研磨・彫刻・工芸・ジュエリーなどの力を結集し、素材開発、加工技術開発、デザイン開発、マーケティング手法の開発、メンテナンス体制の確立―など差別化戦略に取り組まなければならない。長期的な視点に立ち、どのような貴金属宝飾産地にしていくのか個々の企業だけでなく、業界としての哲学が問われている。ある面では我慢し、覚悟を決めて取り組む時ではないか。
(山梨総合研究所 専務理事 早川 源)