メタボリックには運動


毎日新聞No.238 【平成19年3月30日発行】

 私は数年前から公営プールを利用しているが、最近は歩く人が増え、全体利用者も増えている。利用者の増加は、指定管理者制度導入による改善効果もあろうが、世の中にもっと運動が必要であることが浸透しつつあるようである。

  国民栄養調査より、全国平均1人1日あたりの摂取カロリーを見ると、71年に2,287キロカロリーであったものが、00年には1,948キロカロリーと約85%になっている。少子高齢化が進み、年齢構成が変化したことも影響していると思われるが、そのことを考慮しても10%以上減少していることになる。私たちは昔よりも多くカロリーを摂取していると思いがちであるが、社会・産業構造の変化を反映して摂取カロリーは減っている。
 一方、肥満は増加している。03年国民栄養調査では、BMI(肥満度を表す国際的な指標)のデータから30~60歳代男性の3割以上が肥満と報告している。さらに、BMIで肥満ではないと思った場合でも注意が必要である。同じく30~60歳代男性の約3割は上半身肥満の疑いがあるとの報告であり、BMIは体を全体で見た数値のため、局所肥満の状況を正しく把握できない場合もある。
 摂取カロリーが減っているにもかかわらず、肥満が増加する原因はどこにあるのだろうか。食の変化による熱量吸収率や脂肪のつきやすさの変化もあるが、消費カロリーの減少が大きすぎることに起因していると思われる。消費カロリーは運動と基礎代謝が大きな要素であり、基礎代謝は運動による筋肉量の増加によっても増加する。運動することで体液循環の改善によるデトックス(老廃物の排せつ)効果も期待される。摂取カロリーのコントロールだけでは肥満回避には限界があるし、健康な体もつくれない。

  今後も知的労働へのシフトや機械化・ロボット化の進展により仕事・通常生活での運動量は減少するであろう。メタボリックシンドロームと無縁であるためには、日ごろの運動に心掛けることが不可欠である。近く導入される可能性のある職場健康診断での腹囲測定には、胸を張って臨みたい。

(山梨総合研究所 主任研究員 小笠原茂城)