公共交通をめぐる動き


毎日新聞No.240 【平成19年4月27日発行】

 現在、公共交通、とりわけバス交通をめぐって、各地でさまざまな検討がなされている。甲斐市では病院や団地方面などコミュニティーバス3路線が運行を開始した。笛吹市でも旧町村のバス路線再編が検討され、07年度の実証運行が計画されている。

  一方、甲府市では、赤字バス補助額が4,000万円を超え、事業評価検討委員会で、利用者数を検証する中で、路線の廃止も含めて大幅な見直しが必要、とされた。というのも、公平性の評価項目では、受益者の対象が適正かが基準とされ、利用者が限定されると低い評価になるからだ。現在、市は沿線の八つの自治体とバス路線の存廃をめぐる協議を始めている。
 市民の生活の行動範囲が複数の自治体にまたがり、各自治体での公共交通への取り組みに差が大きければ、バス交通による移動が分断され、日常生活に支障が出ることにもなりかねない。広域的な調整・連携に期待したい。
 コミュニティーバスは、従来の路線バスで対応不可能なきめ細やかな交通サービスが提供できるが、その最初の事例と言われるムーバスを運行する東京都武蔵野市では「バスの運行によって自力で社会活動を行える在宅高齢者が増えるのであれば、在宅介護手当削減分で運行費補てん額は帳消しになる」との考えに立つ。
 大月市では65歳以上を対象に、年3,000円のパス購入で市内のバスを乗り放題とした。出かけることで高齢者が元気になり、市全体を活気づけるとする。富士吉田市では1月から公共交通活性化の社会実験が行われている。市民へのアンケートでは「バスは利用しないので関係ない」、あるいは「気兼ねなく出かけられるのでありがたい」という両方の意見が聞かれた。京都市の醍醐コミュニティーバスは、自治会の取り組みから4路線1日170便が生まれている。

  公共交通の改善や普及のためには、市民が公共交通を自分の日常生活の問題としてとらえ、家、職場や店舗の近くに停留所や路線があればいい、通勤・通学時間帯に運行してほしいなど、まず声を上げることが重要である。

(山梨総合研究所 主任研究員 安藤克美)