自転車の安全利用を
毎日新聞No.242 【平成19年5月25日発行】
今月11日から20日までの10日間、「春の全国交通安全運動」が実施された。県内でも「運転は 人に社会に 思いやり」を運動のスローガンに掲げ、三つの重点目標を定めていた。その重点目標の一つが「自転車の安全利用の推進」であり、その背景には、最近における自転車の交通事故増加があるように思われる。
県内で昨年発生した自転車が絡む交通事故による死者は2人だが、全国でみると05年中の事故発生件数は18万3653件で全交通事故の約2割を占め、849人が死亡し、重傷者も1万4000人近くに上っている。また、走行中の携帯電話使用や2人乗り、夜間の無灯火、交差点での信号無視、一時不停止など自転車運転者のマナーの欠如、交通ルールの無視による行為も数多い。自転車に乗ったらドライバーとして違反行為には罰則があり、事故の状況によっては加害者となって損害賠償責任を負うケースもある。自転車は、道路交通法で定める軽車両であるということを自覚していない人が多いのではないかと思われる。そのため、悪質な運転者には全国的に取り締まりが強化されつつある。
本来、自動車と二輪車、自転車、歩行者の通行区分はそれぞれ確保されていることが理想だが、現在の道路事情では予算措置、用地確保など課題が多い。甲府市の平和通りでは、歩道の幅員も広く自転車と歩行者の通行帯が色分けされ、一部は自転車通行可となっている。それでも自転車が歩行者の間を縫うように走る光景も見られる。明確な通行帯の標示と交通安全運動期間などにおいて定期的に通行区分の周知を徹底する必要性を感ずる。
自転車は環境にもやさしく、身近で手軽な交通手段として子供から高齢者まで多様な用途、目的に利用されている。すでに交通安全教育の一手法として、安全運転講習を受けた児童、生徒には法的なものではないが「自転車運転免許証」を交付する学校などが全国的に増え、成果を上げているという。自転車を利用する際には、誰もがルールとマナーを守って思いやりを持った安全運転をお願いしたい。
(山梨総合研究所 研究員 河野恵市)