中心市街地をめぐる議論


毎日新聞No.244 【平成19年7月20日発行】

 全国の地方都市では、中心市街地活性化に向けた取り組みが盛んである。県内においてもさまざまな議論がなされている。そこで、議論を深めるために次の視点を提案したい。それは、中心市街地が空洞化した真の原因追究と、自治体・商店街および地域住民が共有する理念・哲学による中心市街地の創造である。

  中心市街地が空洞化する原因として、中心市街地における投資効果の低さ、車社会に適応しない市街地、利害関係者が現状に安住することを望むことによる新陳代謝の低下などがある。甲府市中心市街地の商業地における地価公示価格とオフィスビルの平均賃貸料の推移を統計データがある97年と06年の比較で見ると、前者の平均下落率は約80%となっている。一方、賃貸料は平均下落率が12.8%にとどまっている。つまり、事務所を借りて新規事業を始めたいと考える事業者にとっては、メリットが見いだしにくい状況にある。非競争的な市場では新技術の活用や経営の効率化に積極的に取り組む動機が低下し、経済活動が損なわれることになる。
 加えて、甲府市における中心市街地の高齢化率は33.1%と市平均の23.7%、県平均の21.3%より約10ポイント高くなっている。高齢化や後継者問題もあり、中心市街地は旧来のままの事業・生活スタイルを維持しており、現状安住の住民もいると思われる。
 山梨県の乗用車保有率は1世帯あたり1.541台と全国で9番目に高い。これは車社会の交通体系、生活様式が定着していることを意味しており、郊外ショッピングセンターに比べると、中心市街地は車社会とのミスマッチがある。このように、市街地空洞化の原因は複雑である。

  次に、中心市街地活性化には、哲学・理念が必要である。市町村の合併が進行し行政区域が大きく変わり、住民の行動範囲も変化した。こうした中で、「市街地は大切である」、「そもそも中心市街地は必要か」といった議論も重要であろう。こうした根幹的な議論を経ることが50年、100年の永きにわたる「歴史あるまちづくり」、「住、商、業のバランスあるまちづくり」につながるものである。

  「原因の追究」と「まちづくり哲学・理念」があって初めて、「目指すべきまちづくり」が可能となる。

(山梨総合研究所 主任研究員 福田加男)