メタボ対策に地域資源活用


毎日新聞No.245 【平成19年8月10日発行】

 08年度から、40~74歳の被保険者に対するメタボリック症候群への対策が本格的に実施される。国民健康保険(国保)の保険者である市町村などの全医療保険者に対して、生活習慣病に関する健康診査(特定健診)や特定健診の結果、健康保持に努める必要がある者に対する保健指導(特定保健指導)の実施が義務化される。さらに、特定健診の受診率及び特定保健指導の実施率やメタボ該当者・予備群の減少率について、13年度に数値目標が課せられ、達成できない場合のペナルティーも用意されている。

  国を挙げてこのような対策を講じる理由は、生活習慣病などの慢性疾患の増加、特に糖尿病の増加による医療費の増大が看過できない状況にあるためである。県内の医療費を調べてみると、国保加入者が06年5月の1ヶ月間に支払った診療費は過去最高の89億円になっており、10年前の96年と比較して約3割増加。1人あたりの診療費は、10年前に比べ約2割増加して2万4404円となっている。
 また、人口減少時代の到来により県内の国保加入者は、06年に初めて減少し、36万6427人となっている。にもかかわらず、受診率は昨年に比べ約3ポイント増加し、86.2%となっている。受診率が増加する原因として、疾病の重症化や長期化があり、結果として安心して人生を過ごすことができなくなるという不安が生じる。人々が健康な生活を過ごせるように、生活の質を確保するための対策も早急に必要である。

  山梨県は、自然や温泉など地域資源に恵まれている。メタボ対策としては、食生活の改善やスポーツジムの活用などが一般的であるが、これら地域資源の活用も考慮すべきである。県内では、瑞牆山登山と温泉療養、西沢渓谷と森林セラピーといった登山教室やウォーキングなどの健康サービス事業が行われている。市町村は国保部門だけでメタボ対策に取り組むのではなく、健康部門などとの連携を密にし、新たな経費をかけずに結果を出すことも重要である。そのためにも、既存の健康事業や社会資源・地域資源の再発掘を行い、各地域の特色を生かしたメタボ対策を取るべきである。

(山梨総合研究所 研究員 斉藤七二)