行政サービスの積極利用を


毎日新聞No.246 【平成19年8月24日発行】

 国から地方への三位一体改革による税源移譲で、今年6月から個人住民税の引き上げが実施され、住民からの苦情が殺到した。総務省は、「住民税の増えた分は、所得税が減っているので、両税を合わせた負担は基本的に変わらない」としている。実際は、景気対策で導入されていた定率減税が景気回復を踏まえ廃止となり、ほとんどの家庭で税負担は増えている。

  毎年の所得にあまり変動がない人は、07年度の住民税が増えた分は、所得税が減らされ負担の増減はないが、退職などの理由で07年中の所得が大きく下がり所得税がかからなくなるような年度間に所得変動がある人は、07年度住民税で税負担が増えた分を07年分の所得税で調整することができなくなる。このため、08年7月中に市町村に対して申告することで、07年度住民税を税源移譲前の水準に減額する経過措置が設けられているので、対象者は申告の必要がある。
 今回、税源移譲により住民税率が引き上げられたことで、地方は必要な財源を直接確保でき、住民にはより身近な行政サービスの提供が可能となる。
 いったん確定した税金は納付するしかない。ならば、住民は自治体の財政状況や税金の使われ方に目を光らせる一方で、行政から提供されるさまざまなサービスを熟知することが重要である。例えば、少子化対策や子育支援、健康増進等の福祉保健サービスは年々支援が拡大されている。児童手当は小学6年生まで受給でき、医療費助成では乳幼児や子どもの医療費負担が実質無料になる(自治体によっては小学6年生まで)。また、不妊症で治療中の夫婦に対し費用の一部を助成する制度もある。健康増進、高齢化対策でも住民健診代の補助や各種無料健康相談、介護補助等さまざまである。住民サービス強化のため自治体独自のサービスを行っているところもある。

  これらの行政サービスを受けるには、自ら申請手続きを行う必要があり、知らないと受けられない。この点は行政側にも改善の余地はあるが、自治体ホームページや広報誌等によく目を通し、住民税負担が増えた分、利用できる行政サービスは積極的に利用したい。

(山梨総合研究所 研究員 野﨑三則)