観光振興と地域活性化


毎日新聞No.248 【平成19年9月21日発行】

 観光振興による地域振興がうたわれて久しい。6月末には「観光立国推進基本計画」が閣議決定され、外国人旅行客数、日本人の宿泊日数などの目標値を設定し、これら目標に向けた総合的な施策を計画的に推進するとした。注目すべきことは、地域活性化にとって地域独自の魅力を生かした体験型観光などの新たな需要の創出が重要であり、地域密着型のニューツーリズムの促進に向けた施策を推進するとしている。

  ニューツーリズムについては、長期滞在型観光、エコツーリズム、グリーンツーリズム、文化観光、産業観光、ヘルスツーリズムなどが挙げられている。これらは地域独自の資源を活用した旅行を地域が企画・開発し、提案していく旅行であり、各地で企画・試行されているものの、雇用を生み出したり、経営的に成功しているものは少ないといわれている。
 県内では、各自治体やNPO法人などが水や森林、ワイナリー、歴史文化資源を活用したさまざまな体験型ツアーを企画・実施している。中でも、ヘルスツーリズムについては、増富の湯、キープ協会、山梨市、小菅村エコセラピー研究会などにより、数年前から健康プログラムの提供や体験ツアーの実施が継続的に行われ、試行の段階であるにもかかわらず、リピーターなどの顧客も生まれている。
 各地の取り組みは盛んであるが、事業としての継続性についてはクリアすべき課題がある。誘客を継続的に図っていくための手段、スタッフの確保・育成、施設・環境・インフラの改善策、そして健康研究機関と宿泊施設、観光施設との連携などの推進体制がある。

  本県の優位性もある。山梨県では、「森の癒し」を活用したヘルスツーリズムの推進に向け、研修会の開催や助成などの支援を行っている。今後は地域の取り組みに対応した県有林の保全・整備が求められる。県環境科学研究所では、自然がもたらす生理心理学的効果に関する研究が継続的に実施され、ヘルスツーリズム推進のための基礎を提供している。将来的には、各地の健康プログラムの企画開発や事後評価への関与など、研究と実践の連携強化が期待される。

(山梨総合研究所 調査研究部長 中田裕久)