安全・安心は地域から


毎日新聞No.252 【平成19年11月30日発行】

 果たして日本は、治安がよく、安心して暮らせる国なのか。07年2月に内閣府が発表した「治安に関する世論調査」では、「そう思わない」という回答が52.5%と半数を超えた。また、「ここ10年で日本の治安はよくなったと思うか」に対しては、「悪くなった」との回答が84.3%もあった。

  06年の全国刑法犯認知件数は、戦後最多を記録した02年の28%減の205万件で、国民の約60人に1人が被害に遭った計算になる。一方、県内での認知件数は、9,547件と6年ぶりに1万件を割ったものの、殺人、強盗、放火などの重要犯罪は前年より21件増加し138件となった。
 こうした犯罪の多さや重要犯罪の増加が、国民に治安悪化を感じさせる要因であろう。本来、犯罪抑止は警察の仕事であるが、全国平均で31%にとどまる検挙率の低さから考え、「自分の身は自分で守る」という発想の重要さに思い至る。さらに、個々の力には限界があるため、その連携すなわち地域での対応が犯罪抑止に大きな力を発揮する。
 例えば、県内の市町村でも生活安全条例の制定を始め、青色防犯パトロール車の配置、ボランティアなどによる自主防災組織の活動などさまざまな取り組みが行われている。富士河口湖町では、インターネットや携帯電話を活用して、地域の不審者情報など地域の安心・安全に関する情報を住民と共有するシステム「ふじかわぐちこ安心e-ネット」を運用している。また、心を落ち着かせ、犯罪を思いとどまらせる効果があるといわれる青色街灯の設置を進める県内外の自治体も多い。
 前述の世論調査では、治安が悪くなった原因として「地域社会の連帯意識が希薄となったから」、「青少年の教育が不十分だから」などが上位に挙がった。近年、地域のつながりやモラルが低下してきたといわれているが、地域の安全は地域で守るという連帯感を深めることが大切だろう。

  教育による規範意識の醸成と住民一人ひとりが防犯意識を高め、住民と警察、行政が連携して、犯罪のない地域づくりを推進していくことが、安全で安心して暮らせるまちづくりへの第一歩である。

(山梨総合研究所 研究員 河野恵市)