景観法と街づくり


毎日新聞No.254 【平成20年1月11日発行】

 04年に景観緑3法が施行された。この法律の目的は美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造、および個性的で活力ある地域社会の実現である。
  そして、これまで法的拘束力のない地方公共団体の景観条例ではなく、国の法律によって裏づけされた法に基づく景観条例や景観計画が可能となり、地域ごと景観の維持・保存に大きな役割を持つことが可能となった。
 07年12月1日現在、景観行政を担う景観行政団体は、地方公共団体の約17%にあたる308自治体である。既に景観計画を策定したのは、このうち64自治体である。神奈川県の7市1町、滋賀県の4市、北海道・岐阜・宮崎県が3市町と上位にある。山梨県では、41%にあたる12自治体が景観行政団体となっているが、景観計画を策定したところは残念ながらない。

  さて、景観法の特徴の一つが、景観計画区域の策定の提案など、NPO(非営利組織)や住民の参加がしやすいように措置されていることである。例えば、行政、住民、公共施設管理者などが景観協議会を設け、景観に関するルール作りができることになっている。また、景観計画は景観行政団体が策定するが、住民が提案をすることもできる。
  つまり景観法の精神は、住民自らが地域の自然、歴史、文化と人々の生活、経済活動との調和を考え良好な景観を保全するものである。また、良好な景観が形成されることにより地域の魅力が増進、創出され地域の活性化につなげることもできる。
  高度成長期以後の開発は、全国いたるところで経済活動が優先された街づくりや、道路、工業団地などが無秩序に整備された。一方で、地域独自の美しい景観や生活に密着した環境、地域の個性である歴史的街並みの景観、伝統的な生活空間など緑豊かな農地、地域の個性は失われていった。その結果、象徴的な景観がJR主要駅前の広場であり、バイパス沿いに広がるロードサイド・ビジネスの風景である。

  山梨県は、田園風景と市街地が比較的バランスよく残っている地域である。景観緑3法を上手に生かした美しい県土を行政・住民・事業者で作り上げ、後世に残す責務があるように思う。

(山梨総合研究所 主任研究員 福田加男)