地域の消防・防災の要


毎日新聞No.255 【平成20年1月25日発行】

 新春恒例の消防団出初め式が、県内各地で行われた。威勢の良い出初め式とは裏腹に、消防団は今、大きな岐路に立たされている。
  95年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、多くの消防団員が自らも被災しているにもかかわらず、地震直後から消火や救助、避難誘導、警戒など幅広い活動に従事した。特に日ごろの地域に密着した活動の経験を生かして、倒壊家屋から数多くの人々を救出した活躍は目覚ましいものがあった。
震災や水害など大規模災害発生時には、消防署、警察、自衛隊のみでは十分に地域を守ることは困難な場合も想定されることから、住民などで組織され、地域の実情を熟知し、動員力を有している消防団の役割は重要である。

  しかし、かつて全国で200万人いた消防団員が、07年には90万人を割り込んだ。県の団員数は1万6000人で、各市町村の条例で定める定数を1300人以上下回っている。さらに、06年の団員の平均年齢は37.8歳と高齢化が進み、職業構造も自営業者中心から、会社員などの被雇用者の割合が69.3%に達している。
  このような団員数の減少や高齢化、団員構成の変化は、地域防災力の低下と地域の安全・安心の確保に支障をきたすこととなる。消防団員の適正数の確保と若者の入団、及び地方公務員や自営業者の入団が各地域・市町村の課題となる。
  昨年は、新潟県中越沖地震や大型台風の上陸、豪雨災害などが多発し、阪神・淡路大震災以降も国内では多くの災害に見舞われている。県でも、東海地震が切迫しているといわれ、地域防災力を高めることが急務となっている。

  地域の消防、防災の要である消防団員の減少は、行政だけに任せてよい問題ではない。地域に暮らす住民自身の生命・財産に関係する重大な問題として、一人ひとりが消防団活動に関心を持ち、理解と協力を得ながら適正数の消防団員確保に努めなければならない。
  しかし、少子化や人口減少下では団員の確保は容易ではない。今こそ消防施設・装備の高度化や消防署との連携強化により大規模災害に備えるなど、少ない団員数でも地域を守ることができる新たな消防団像を模索するときではないだろうか。

(山梨総合研究所 研究員 野﨑三則)