ユニバーサルデザインの定着
毎日新聞No.256 【平成20年2月8日発行】
「ユニバーサルデザイン(UD)」という言葉をどの程度知っていますか。
県が県政モニターに対して行った調査結果によると、「全く知らなかった」39.1%、「言葉を見たり聞いたりしたことはあった」31.8%となっており、UDの認知度は非常に低い。
UDとは「年齢、性別、国籍、障害の有無など個人のさまざまな状況にかかわらず、可能な限り多くの人が利用できるデザイン」のことで、Universal(普遍的な、万人共通の、万能の)とDesign(設計、構想、計画)という二つの英単語が合わさった言葉である。
「デザイン」という言葉が含まれているため、ハードに関する言葉と考えてしまうが、サービス・情報・行政といったソフトに関しても活用できる。そのため、社会環境の整備を総合的に進める上での基本となる考え方のひとつといえる。
UDの推進には、三つの大事な要素がある。一つ目は、プロセス。商品などは、製造者が一方的に決めれば良いというものではない。利用者の立場に立って考えてみる必要がある。多くの人の意見や要望を聞き、さまざまな観点から検討を行うことで、より良い発想や取り組みが生まれてくる。利用者の声を聴き、共有し、活用するというプロセスを通じて良い循環が生まれてくる。
二つ目は、継続性。デザインや取り組みといったものは一度決めてしまえばそれで良いというものではない。多くの人に見たり使ってもらうことにより、新しいニーズや意見が出てくる。利用者の声を反映するような継続的な情報の収集・活用が求められる。
最後は、利用者の参画。使いやすさを決めるのは、他でもない利用者である。誰にでも使いやすく、分かりやすいデザインや暮らしやすい生活スタイルを実現するためには、また、多様なニーズをくみ取るためには、多様な利用者の参画が必要である。
私たちの社会は、体力のある人や、そのことに知識が豊富な人の利用が前提となっている。UDが推進することで、利用者の声を取り入れ、計画の段階から、すべての人の利用を念頭に置き、さらに、常に見直しや改善を行うといった姿勢が定着することを望む。
(山梨総合研究所 研究員 斉藤七二)