無くしたときも警察へ


毎日新聞No.257 【平成20年2月22日発行】

 改正遺失物法が、昨年12月10日施行された。今の情報化社会や遺失物の内容等を反映させた今回の改正の概要は、拾得物の情報をインターネットで公表すること、拾得物の保管期間を6ヶ月から3ヶ月に短縮、傘などの大量・安価なものや保管するために多額の費用がかかるものについて、2週間以内に返還がされないときは売却などの処分ができること、携帯電話やカード類など個人情報が入ったものについて、拾い主に所有権は移転しないこと、鉄道事業者などの特例施設占有者は施設内の拾得物について届け出をすれば自ら保管できること、などである。

  この改正により、落とし主にとっては、これまで困難であった出張先や旅行先での遺失物の情報が入手しやすくなり、個人情報も保護されることとなる。また、拾得物の管理については大量で保管費用がかかっていた問題を保存期間の短縮及び現金化することにより解決している。さらに施設占有者は、今までの、すべての拾得物について警察署に届け、6ヶ月後に所有権を取得したときには再度引き取りに行かなければならなかったという二度手間が、軽減されることとなった。
では、実際の遺失物取り扱いの状況はどうか。最新の警察白書によると、06年中に拾得届のあったもののうち、現金は139億円のうち約7割、物品は1,222万点のうち約3割が落とし主に返還されている。
 しかし、無くした人が届け出る遺失届は、現金では拾得届の3倍近い409億円が出されているのに対し、物品では拾得届の6割程度の761万点しか出されていない。同様の数字が過去5年間示されていることから、拾得届と遺失届の提出数には差があり、特に、落とし主は、現金を無くしたときは届け出るが物品のときは届け出ないことがある、ということがわかる。

  落とし物をしたとき、見つからないとあきらめ、届け出ない人が多い。また傘などは、よほどの思い入れがなければ「また買えばいい」という使い捨ての感覚を持つ人も多くいるだろう。
 今回の法改正によって、物を大切にしようとする意識が醸成され、落とし物の返還率が上がることを期待する。

(山梨総合研究所 研究員 中沢 敏)