2地域居住・移住施策の有効性
毎日新聞No.258 【平成20年3月7日発行】
2地域居住という言葉が最近よく聞かれる。手短にいうと、都市住民が、農山村などにおいて、中長期、定期的に滞在し、都市に加え複数の生活拠点を持つことである。
県では06年3月に、田舎暮らしなどに関する情報の提供、都市住民の体験交流機会の拡大を目的に、東京・日本橋の富士の国やまなし館内に「グリーンカフェやまなし」をオープンした。今年の1月末までで、518件の問い合わせがあり、うち空き家関係が約8割を占める。
こうした2地域居住や移住施策の多くが団塊世代を主たるターゲットにしているため、いずれは高齢者になり、税収は少なく、医療などの行政負担が増すばかりだとの声もある。
山梨市定住促進プロジェクトチームと当研究所では、5年間で100世帯が移住・2地域居住をした場合の経済効果及び行政負担を算出した(年代=40歳、60歳・住居購入の有無・居住地=旧山梨市、旧牧丘町、により12パターンを想定)。県全体では、20年間で約62億円となり、建築投資が続く5年目が最大となる。
行政収支については、収入は住民税、固定資産税、介護保険料を想定し、支出は国民健康保険、介護保険、ゴミ処理費とした場合の20年間の収支は約4億円のプラスであった。収入内訳では、住民税・固定資産税の割合が大きい。移住する年代にかかわらず固定資産税が支出全体を上回るため、単年度でも赤字にならない。
山梨市をはじめ7市町で空き家の紹介を行っているが、登録物件数は最も多い市でも50件前後である。2地域居住の希望者は、学生時代を過ごしたなど、つながりのある地域にひかれることが多いが、こだわりなく自然が豊かで首都圏から近い地域を目指すこともあろう。また、居住者の消費行動は市町村域を越え、広い範囲で経済効果がある。現在実施している移住希望者を対象とした「やまなしライフ相談会」に加え、他市町村の物件が紹介できるシステムなど、県全体として需要に応えていくことが重要である。
(山梨総合研究所 主任研究員 安藤 克美)