「高齢者の世紀」企業は備えを
毎日新聞No.262 【平成20年5月16日発行】
後期高齢者医療制度や運転免許証返還促進の問題など、このところ高齢者に関する話題が多くなってきた。
ところで、いつ、誰が、65歳以上を「高齢者(老人)」と決めたのだろうか。調べてみると、今から52年前のことである。1956(昭和31)年の国連報告書に65歳以上の人口構成比率が7%以上になった場合「高齢化社会」と呼ぶとある。これが「高齢者基準」の始まりのようである。
日本では、1965(昭和40)年の国勢調査から65歳以上を「高齢者」と呼ぶようになったのだが、この年の65歳以上人口比率は6.3%であった。ところが、07年の高齢者比率は21.5%と総人口の2割を超えている。ちなみに、75歳以上人口比率でも9.9%、80歳以上人口でも5.6%である。長寿社会の実現によって高齢者の基準が実態に合わなくなっていることは明らかで、果たしてこの年代をひとまとめにして老人扱いしてよいのだろうか。
厚生労働省では、06年4月から少子高齢化に伴う労働力不足に対応するため、希望する従業員全員を70歳まで継続して雇用する「高齢者雇用安定法」の改正法を施行した。完全実施は2013年度以降になるが、65歳までの雇用を確保するよう事業主に義務付け、年金支給開始年齢までは働き続けることができるように法整備を行っている。これを受けて、企業は(1)定年の引き上げ(2)継続雇用制度の導入(3)定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じなければならないことになっている。
良きにつけ、悪しきにつけ戦後の日本社会をリードしてきた団塊の世代がいよいよ高齢期を迎える。労働力不足は、量的にも、また技術の伝承など質的な面でも現実化してくるだろう。企業は高齢者の概念を抜本的にとらえ直し「高齢者の世紀」に備える必要があるのではないか。
(山梨総合研究所 副理事長 早川 源)