徒歩通勤の効用
毎日新聞No.263 【平成20年5月30日発行】
2年半前から徒歩通勤している。これは、仕事柄デスクワークが多く健康管理の理由から始めたものである。最近、この徒歩通勤は健康維持の他に色々な面で効用があることが分かった。
まず一つが、自分の住む街の様子がよく分かることである。一歩一歩、地を踏みしめて歩くためにその整備状況や街並みの景観など街づくりの思想・文化が見えてくる。例えば、自動車が走る道路は交差点などを含めてフラットになっているが、歩道はその分大きな段差となり人が歩くには大変不便である。特に車椅子などで移動する、身体に障害をお持ちの方には大変であろう。また歩道は、殆どが道路側に向かって傾斜している。これも同様に人の移動にとっては歩きにくく不便である。つまり街づくりは車中心型構造になっており人が歩いて、あるいは車椅子や自転車などで移動するには不便な点が多いことに気づく。
また、最近はペットと一緒に散歩する人が増えたようである。これと伴に犬の糞が歩道上に置き去りにされることが多くなった。飼い主の方には是非マナーを守っていただきたい。
二つ目が街並み、景観である。幹線道路沿いは商店や事務所ビル、ガソリン・スタンドその他施設が乱雑に立ち並び、色調はバラバラ、屋上には大きな看板が掛けてあり景観が美しいとは言えない。しかし、一歩、路地裏に入るとそこには人の生活の匂いが感じられる。新興の住宅地には無い時間の積み重ね、それが醸し出す路地裏の庶民文化がある。この路地裏を歩くとホッとするから不思議である。
三つ目が人と人の触れ合いが発生することである。毎日、同じ道を歩くため顔見知りができ「おはようございます」の言葉が交わされるようになる。こんな日は仕事も順調に捗り、一日が気持ちよく過ぎていく。
私たちの日常生活は車による移動、会社ではパソコンに向かい一人で作業、会話は携帯電話・パソコンによるEメール、家に帰ると部屋でテレビを見るか、あるいは日中のEメールの続きなど一人で過ごす時間が多い。こうした中で徒歩通勤には、健康増進の効用は言わずもがな、その他にも街中の観察や問題意識の芽生え、そして人との触れ合いなどがある。こんな徒歩通勤を皆様に是非お勧めしたい。
(山梨総合研究所 専務理事 福田 加男)