山梨発の「つみ木広場」


毎日新聞No.264 【平成20年6月13日発行】

 今月初め、昭和町において、町内の5保育園合同による積み木イベント「楽つみ木(らくつみき)広場」が開催された。今回のイベントには、2万5000個の積み木が用意され、総勢200名以上の子どもたちが参加していた。
 積み木は、3㎝の立方体、底辺3㎝の台形、長さ12㎝の板、の3種類しかないのだが、子どもたちは持ち前の想像力で、お城、水族館、新幹線などいろいろな作品を完成させていた。

  この広場は、子どもたちが全身に積み木を浴びることから始まる。次に、子どもたちは、大量の積み木を前に戸惑いながらも、作品を作り始める。途中すべての作業を止め、友達の作品を見て、自分の作品と比較し、賞賛する。そして、再び作品を作る。その後、すべての作品をつなげ、最後に感想を述べ合い、積み木に感謝する。
 このような体験を通じて、子どもたちの内面に変化が起こり、創造力や表現力、自発性といった力が引き出される。また、計画性、協調性、辛抱強さ、友だちを理解することといった力が必要になることを理解する。この広場の目標は、「積み木を通じ、子どもたちが生きる力を培うための遊びの場づくり」であり、教育プログラムとして確立している。
 ここで使われる小さな積み木はすべて県内産ヒノキである。ヒノキが元気に生長するためには、木と木の間を広くする間伐や、枝を整える枝打ちが必要となる。このような手入れをすることで、木の成長にとって大切な太陽の光が根もとまでとどき、木が林となり、元気な森に成長していく。この広場で使われる積み木は、この間伐材で作られており、環境活動にも一役買っている。

  先日、横内正明知事が出演した討論番組で、出演者の一人が用意していたフリップボードを掲げ、山梨県の「かい」は、「甲斐」の国ではなく「下位」の国ではないかと表現していた。私たちの住む県が、このように表現されることは残念でならない。
 そんな折に、この広場に出会えた。この広場は、山梨発の取り組みであり、すでに10年ほど続けられている。県内には、他にもまだこのような意義ある取り組みがあるのではないだろうか。その芽に光を当てていきたい。

(山梨総合研究所 主任研究員 斉藤 七二)