税収確保の取り組み
毎日新聞No.265 【平成20年6月27日発行】
06年度の都道府県別税徴収率(現年分と滞納繰越分の合計)で、県は46位と下位に沈み、徴収率アップが大きな課題となっている。また、モラルの低下や権利だけを主張し義務を果たさない住民の増加、さらには、このところの燃料や食料品価格の高騰で、家庭生活は厳しさを増すなど、納税環境としてはマイナス要素が多く、徴収率の低下は必至とみられる。
今年4月、県と県内20の市町村は共同で、滞納税の徴収にあたる「県地方税滞納整理推進機構」を設立し、業務を開始した。同機構は、活動期間を3年とし、各市町村の滞納案件について、県税務職員の実践・経験を生かした税の徴収手法を市町村に提供し、徴収力の強化を支援するもので、悪質・常習滞納者には、差し押さえや公売などの強硬措置をとる。その後、各市町村が、この徴収ノウハウを吸収し、滞納案件の整理に取り組む。
また、県や市町村が、滞納者に実施した差し押さえ件数は、昨年度から急増しており、県や韮崎市、甲府市では、インターネットによる公売も行なっている。滞納対策の強化は、滞納税額を圧縮し、税収を確保するばかりでなく、悪質・常習滞納者に対して強固な姿勢をとることで滞納抑止にもなり、まじめに納税している住民に対しての公平性も保たれる。県、市町村を挙げて、「逃げ得は許さない」強い姿勢で臨む方針である。
しかし、これら滞納対策は、事後的な措置であり、これらもまた、多くの税が費やされる。ならば、滞納件数自体を縮小することも重要ではないか。納税者の多様なライフスタイルに合わせた納税窓口・収納システムの構築や、情報発信など、納税しやすい環境を整備し、自主納税を促すことや一般納税者をはじめ、将来の納税者である児童・生徒に対する長期的な視野に立った効果的な租税教育に努めるなどの予防対策も必要である。
予防対策と滞納対策が、くるまの両輪の関係で効率よく機能することで、貴重な財源を確保して欲しい。そして、納められた税金が住民の納得のいくよう適正に使われれば、行政に対する信頼度も増し、さらなる滞納税の減少につながるだろう。全国で下位に沈む徴収率の上昇に期待したい。
(山梨総合研究所 研究員 野﨑 三則)