住基カード普及の目的


毎日新聞No.266 【平成20年7月11日発行】

  住民基本台帳カードの普及が低迷している。確かに年度ごとの発行枚数は増加傾向にはあるが、交付が始まった03年8月から07年度末までの累計発行枚数は約234万枚、普及率はいまだ2%にも満たない。
  これに対し総務省は、普及率の向上のため、今年度から3年間の限定で、通常500円程度の住基カード発行手数料を無料化する団体に対し、特別交付税の上乗せをすることとした。この措置に合わせて、これまで20数団体が独自に行っていた発行手数料の無料化は、今年度221団体が導入することになった。
  総務省はまた、住基カードの多目的利用も推進している。これは、発行する各団体が、住基カードのICチップ内に確保されている、独自利用できる領域を使ったサービスで、自動交付機による証明の交付や印鑑登録証、申請書の自動作成などが行われている。今年4月1日現在、これに取り組んでいる団体は143団体で、全国1,811の市区町村の1割にも満たない。

  県内の普及状況をみると、06年度末までの累計では、都道府県別発行枚数でワースト2位の4,029枚であったが、07年度は単年で6,273枚と大きく数字を伸ばした。その中でも、笛吹市と甲州市の昨年度発行枚数の合計は5割以上を占めている。2市ともに昨年度、県内で唯一、カード発行手数料の無料化を導入し、また、多目的利用として、自動交付機による証明書の発行サービスを実施している。さらに、窓口での証明交付手数料300円に対し、自動交付機では100円としたことや、システムを共同利用することで、管理経費を抑えるなど、住民サービスの維持・向上や財政負担の軽減などにも努力をしている。

  住基カードの普及率向上のためには、発行手数料の無料化は有効な手段の一つではあるだろう。このような一時的なものに加え、多目的利用のような、住民が継続的に受けることができる行政サービスを併せて提供することにより、普及は進んでいくだろう。
住民へのサービス向上の手段として、住基カードが普及していくことを期待している。

(山梨総合研究所 研究員 中沢 敏)