踊りと中心市街地
毎日新聞No.273 【平成20年10月24日発行】
先月始め、愛娘に「お祭りに行きたい」とせがまれた。詳しく聞くと、8月に甲府市中心市街地で行われた「甲府大好きまつり」のような踊りの祭りをみたいと言う。インターネットでそのような祭りがないか調べると、静岡市の中心市街地で「静岡おだっくい祭り」(『おだっくい』とは、静岡県中部地域の方言で「お調子者」のこと)という祭りが行われることを知った。
このおだっくい祭りは、まだ6回目と言う若い祭りである。1回目は台風の影響もあり、観客数は2千人だけであったが、今では16万を超える一大イベントに成長している。その内容は、2日間、ただ踊るだけ。御神輿も、出し物も、露天商もない。ただ踊るだけの祭りである。
今年、参加した団体は81団体に上り、各団体が趣向を凝らした踊りを、路上やステージで行った。山梨県や愛知県などからも16団体が参加し、お祭りを盛り上げていた。
静岡市も甲府市同様、中心市街地の衰退が懸念されているが、このように大勢の県内外からの観客や参加者として受け入れ手法を見ると、街に力強さを感じる。静岡市では、他にも国内外から参加者を受け入れるイベントもある。しかし、このようなイベントがあるから、静岡市の中心市街地が活発なわけではない。
静岡市では、長期的視野に立った商店街の賑わいづくりを、地権者も巻き込み、積極的に行ってきた。また、「一店逸品運動」の発祥地でもあり、この運動が各店舗に魅力を持たせた。逸品を開発するためには、来店客とのやりとりを通してニーズを把握する必要がある。そのためにも、ニーズに敏感に対応できる感性を身につけることが大切である。さらに、他店舗の商品にもアイデアを出し合うなど、逸品の完成度を高める努力もしてきた。
甲府市でも、中心市街地の再生に向けた計画が始まろうとしている。この計画の中では、中心市街地が買い物の場として楽しめ、歴史や文化にふれることもでき、定住の場所として選ばれるための取り組みが盛り込まれている。
計画という笛の音に、商店主や住民が上手に踊り、中心市街地が住む人・来る人にやさしい街となることを望む。
(山梨総合研究所 主任研究員 斉藤 七二)